おおさかラウンドテーブルvol.1 女性2人が首長になったら、大阪は変われるんちゃうか

就活中の就労証明書という矛盾

Bさん(杉谷さん):わたしはNPO法人子ども情報研究センター、そして国際女性年連絡会に入ってまだ3年。皆さんと比較してまだまだひよっこなんですけど、12年前に子どもを産む時に仕事を辞めざるを得なくなり、その後も、働きたくとも働けない状況がずっと続きました。夜中まで働かなくてはいけない職場だったので辞めたんですけど、子育てが落ち着いたらまた働こうと期待を持ってました。けれども、いざ就職活動をする時になって、100を超える企業に履歴書を送って、面接をしてくれたのはたったの3つ。3%にも満たないわけです。希望する勤務開始時期の1年前からスタートしたのに、愕然としました。

それで、その3つの面接に行ってみたら、面接官はみんな、ほんまにステレオタイプな男の人で、言われることは全部同じ。「お子さんが熱出したらどうするんですか」、「近くに祖父母の方が住んでいたりサポートを受けられますか」、「ご主人はそういうの(育児)に協力的ですか」。一個一個、減点されていくような気持ちでした。

谷口:わたしも15歳と17歳の子どもがいて、シングルマザーをやってます。たまたま仕事を続けられていたので、そこから外れないように必死にやってきましたけど、とってもしんどかった。「あかんかったらおじいちゃんおばあちゃん頼ったらえーやん」って言われても、そんなみんながみんな元気なわけでもなければ、他県から来た人なんて頼れる方がいらっしゃらなかったりするのに。

Bさん:保育園に入るにも、就労証明書が求められる。でも希望する会社の面接では、「保育園には入れそうですか」と聞かれます。どっちが先やねんと。小学校に上がったら今度は学童の問題があって、抽選でダメだったらまた仕事を辞めなければならなくなる。どうにか1年生の最後の1カ月になってやっと入れたと思っても、2年生からはまたわかりませんと突き放されて、どうやって働いたらええんやと。まわり見渡しても、子どもの日々のお迎えも、学級閉鎖になった時に有休取るのも母親ばっかり。公助もそうですが、企業や世間の理解や配慮についても、子育ての実態と全然あってないってことを身をもって知ったんです。

そんなギリギリのところで我慢していて、嫌なことがあっても辞められない。ハラスメントがあっても歯を食いしばって続けるしかないっていうような圧倒的な負の連鎖にどっぷり浸かってきたので、その辺りが少しでも改善されるといいなと思います。

北野:一旦辞めているから就労していないわけで、それでいざ働きたいと思っても保育園に入れないと雇ってもらえない。これはもう大変な矛盾ですよね。

谷口:しかもフルタイムで働いてないと、基本的に就労証明出ないですからね。

北野:市町村によって保育園や幼稚園に入る時の基準はまちまちなんですけども、希望する園を複数出して、優先順位がつけられます。それが減点方式なんですけど、その減点方式っていう発想がすごく貧困だなとは思っていて、加点方式で見ていくべきだなと、いつも感じておりましたね。

Cさん:退職して、いわゆる老後を送ってるんですけれども、岸田首相が育休中に勉強し直せみたいな、ぶったまげたことを言うてましたでしょう。

いま皆さんのお話を伺ってても、40年前のわたしと状況ほぼ一緒なんですね。子どもいうたら保育所とか子ども手当のことばっかり言われますけど、わたしはちょっと違うんちゃうかなと。少子化を克服しようと思ったら、子どもを産んで育てられる環境をきちんと作っていかないといけない。

わたしは男の子を一人産みましたけど、妊娠したら産休、産後は育休、それが終わっても育児に時間をとられるので同期の男性よりぐっと稼働時間が短くなります。スキルアップするのに5年から7年の落差があるんですよ。その落差にわたしは耐えられなくて、2人目を産もうという風に思えませんでした。そういった労働環境を、ジェンダー視点で切り込んでいただいて、企業を変える、世の中を変えてほしい。亡くなった夫と子育てするうえで、男の子やからという育て方は一切してこなかったんです。保育所まではよかったんですよ。でも、小学校上がったら「僕の家はふつうとちゃう」と言い出した。友達は、学校終わったら家でお母さんがおやつ作って待ってくれてる。何で僕だけ学童行かなあかんのと。ほんで、仕事辞めてほしいと言われたことがあって。ついつい理詰めで言うたんですよ。小学1年生の息子に(一同笑)。

男も女も誰もかれも自分の食い扶持は自分で稼がなあかんのやと。だからわたし、谷口先生に期待してるんです。

谷口:ありがとうございます。

昭和の日本の雇用モデルは、男性が育児に参加しない前提でした。男性型働き手モデル=専業主婦がいる世帯を想定した時代はとうに過去のものなのに、世間の意識がなかなか変わらない。ジェンダー平等でいうと、男男とか女女とか、わたしは男女でくくれない家庭があってもいいと思っていて、もっといえばいろんな単位の家族があっていい。そうした家族の多様化っていうものをちゃんと認められる政策がないといけない。だからわたし、北野さんとお話をしてて、しんどい人が減ったらええなと。ご機嫌さんな街がええなと言っていて。

北野:わたしは居心地のいい町にしたいなと思ってるんですよ。公共が役割をしっかり果たしてくれないとご機嫌になれないばかりか、居心地の悪さを感じてしまいます。

谷口:政策って、この社会のど真ん中にいてる強くて元気な男の人達の目線で進みがちですけど、そうじゃない方達の言うことに耳を傾けることは、女性のためだけではなく声の小さい、弱い、届きにくくなっている人達全員のためになると信じてます。

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歴代女性知事は日本でたったの7人